司化成工業 つくばテクニカルセンター
空気で建築をつくる:つくばテクニカルセンター
建築が見えなければいいと思う。建築からカタチを消すことは出来ないが、建築が意識されない空間がつくりたい。機能的や文脈的に建築を作れば恣意的なカタチを消すことはできる。では、認識されるけど気にならない建築は出来ないだろうか。すごく薄い部材だけで空間を覆えば、建築の重力感だけが消えた空気のような建築ができるのではと考えた。
結束バンドや梱包資材などを製造する会社が隣地に新工場を計画し、統合したオフィス棟を新築することとなった。開発計画では鉄骨造2層の計画だったが、より居住性が高い、郊外型オフィス空間を依頼されて設計が始まった。まず、大型トラックが出入りする敷地内や周辺環境を考慮して、木造平屋の18m角ボリュームを1.2m 浮かせた。これは、外周に個室を配した設備環境的な計画でもあり、床下には合理的な設備スペースが収められている。高さ4mの正方形ボリュームは、2mの高さで水平に分割され、その結果生まれた市松状の外壁によって風景を切り取り、空と緑だけが見える居住性と環境性能の高いオフィス空間を中央に置いている。
オフィス空間は、構造用合板を5枚貼り合わせたレシプロカル(相持ち)構造梁の塊を高さ3mの壁柱の上にフワッと載せ、細いトップライトから木洩れ日のように光が降ってくる構成となっている。空気の構造を上に載せた感じである。外装では、4種類の南洋材とアルミアングルを組み合わせて、薄い光の膜を纏わせ、視線や天候や経年に応じた変化を作り出すことを試みている。外装と天井に空気を纏わせた建築は、強くて軽い、不思議な重力感をもった場を作り出せたように思う。(吉松秀樹)
・データ
名称 :司化成工業つくばテクニカルセンター
所在地 :茨城県つくばみらい市
クライアント :司化成工業株式会社
主要用途 :事務所・研究所
設計期間 :2014年1月〜2016年3月
工期 :2016年4月〜2016年11月
設計 :吉松秀樹+アーキプロ/前田道雄
担当 :吉松秀樹、前田道雄
構造設計 :山田憲明構造設計事務所
担当 :山田憲明、杉本将基
設備設計協力 :YMO
担当 :山田浩幸
照明デザイン :ぼんぼり光環境計画
担当 :角舘まさひで、竹内俊雄
開発計画 :リゾム建築計画
担当 :林藤男、木村卓司(トーユー)
施工 :常磐建設
敷地面積 :7,966.41m2
建築面積 :353.44m2
延床面積 :328.96m2
階数 :地上1階
構造 :木造
掲載誌 :新建築 1703
受賞 :2017年度JIA優秀建築賞