ガラス(住宅特集0904)

多くの建築家にとって、ガラスは「無の素材」である。最近、アルミと木など建築素材を等価に扱うことを試みているが、ガラスだけは、サッシュの見付けを出来るだけ小さくし建築デザインと一体化させることで、その存在感を消そうとしている。

しかし、表現素材としてのガラスを考える場合もある。ガラスと他の建築素材との大きな違いは光を通すことだが、それ以外にも表面の平滑さ、堅さ、精度の高さ、反射性など、他の建築素材にはない力をガラスは持っている。また、不思議なことに、ガラスのわずかな厚みの違いを僕たちは感じとることができる。そんなガラスが空間に及ぼす力で、Gorgeousな(少し突き抜けた)空間を作り出せるのではないかと思うのだ。

 

狭小敷地に立つ都市型住宅の半分をガラスで覆ったことがある。このガラス箱はその住宅のリビングであり庭でもあった。そこでサッシュの見付けをH鋼の方立に隠し、ガラスだけで空間に力を与えることを試みた。ガラス箱1階のユーティリティーテラスに使用した厚さ10mmの型板ガラスは、最も不透明で、磨りガラス面にカットグラスのような切り込みの模様がある。光が当たると、通常の型板のヌメっとした光り方と異なり、厚みや素材を感じさせる不均質な輝き方をして、天候や季節、時間など、周辺環境の変化を増幅してくれる。

2階のリビングテラスでは、厚さ10mmのブルーの熱線吸収ガラスを選んだ。ここでは、透明である事、つまり概念的に外部であることを強調しようと考えた。淡いブルーの色は空を強調し、空間の色をかすかに変え、空間に堅さや緊張感を与えているように思う。

また、ダム湖にかかる200mの大橋の高欄デザインで細長いガラス板を200枚並べた時には、砂型を用いた型板ガラスの鋳物を試みた。角が丸く、厚手のゴブレットグラスのような鈍い光を放つ型板は、透明でありながら物質感があり、場を作る力があった。

 

最近、こういった表現素材として魅力のあるガラスが手に入らなくなっていく。不均質なガラスであるからこそ、空間に深みのある味わいがでるのにと残念に思う。

 


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